ダンクレオステウス テッレッリ
Dunkleosteus terrelli
作品サイズ 32cm
縮尺 1/25
・頭部
世界中で展示されているダンクレオステウスの頭部ですが、そのオリジナルはクリーブランド自然史博物館のもののようです。ですが、それぞ れの展示物により微妙な顔付きの違いがあり、どれを元にするかで雰囲気が結構変わるように思います。その違いの生じた理由は分りませんが、今回はネット上 で見つけた頭骨の側面写真(フィールド博物館の物)と各論文等に引用されている頭骨図のバランスを基本に、2008年にクリーブランド自然史博物館を訪れ た際に画像を撮ったダンクレオステウス頭骨の形状の要素を盛り込んで製作しています。どちらかといえば直線的な顔つきでしょうか。一方で、以前ディニクチ スとして論文等に引用される事が多かった頭骨図は丸顔で、そちらのイメージもなかなか魅力的ではあります。
ダンクレオステウスに関しては、顎の 可動に関する研究も発表されており、それによると口を開く際には、下顎が下がると同時に、上顎と胴体部の装甲との繋ぎ目にある関節部(?)も可動し、上顎 も上にあがるようです。その点も留意し造形しました。その研究によれば、この模型よりももっと大きく顎が上下に開くようです。口の中に関しては、現生のサ メをそのまま参考にしています。考察不足の感が否めませんが、どんな古生物でも口腔内の軟組織は毎回どうしていいやら途方に暮れる部分です。
・胴体
ダンクレオステウスの胴体を考察する際には、胴体部が発見されている数少ない近縁種であるコッコステウスを参考にしない訳にはいきません。当初はコッコス テウスのプロポーションをベースに製作、一度は塗装前まで完成させていました。当然尻尾は横に長いタイプとなります。大型の軟骨魚類という事で中~大型の サメのような縦に細長い三日月型の尾ビレも考えましたが、現生のホホジロザメのような機敏な動きが出来たようには思えず、また近縁種で良い標本が残ってい る以上、それを参考にするのが無難と考えたのです。が、その後、とある研究者さんとお話していた折に、ジンベイザメやウバザメのような、それほど機敏には 泳がないサメでも大型の種類であれば三日月型の尾ビレを持っている事を指摘され、ダンクレオステウスのような巨体の持ち主であれば三日月型の尾ビレでも良 いのでは、と考え変更しました。ただし、骨が入っていない尾ビレ下側は大型のサメに比べ大きさ控え目にしています。これは特に理由はなく、何となく、で す。また、ヒレがサメに近い構造である事を示唆する標本・研究もあり、全体的にも大型のサメに似た形状で完成させています。となると、胸ビレももっと長さ のある形でも良かったかな、とちょっと後悔していたり。また、コッコステウス型の胴体の異質な雰囲気もやはり捨て難いところです。
胴体の装甲部 と背ビレの間にあるウロコ(?)は完全に想像です。ダンクレオステウスとはちょっと系統が離れますが、板皮類の中には全身がしっかりとしたウロコで覆われ た状態で発見されている種類もあり、それならサメ型の復元を採用しつつも、少しはウロコの部分も残っていたりしないかな~という事で。造形的にも、ちょっ とアクセントが欲しかったですし。ちなみにオスとして造形しています。
・色
全くの想像です。結局サメ型の胴体としての造形になったので、胴体はベタにサメっぽい色です。背ビレ、尾ビレの先には少しアクセントを入れています。と、全体としては胴体は無難な色になったので、頭部と胴体の装甲部分は派手目に。
胴体が難しいのは予想通りでしたが、頭部についても魚の基本的な知識の無いこともあって、意外に苦戦しました。正直に言えば、顎関節周りの構造や筋肉がど うなっているか、ほとんど理解していません、、、。また、これまであまり魚類の造形の経験が多くないという事で、「魚らしさ」の表現のツボが掴み切れてい ないもどかしさも。あとは、まぁ何といっても、前回の絶滅哺乳類大会の「毛が無いネタばかり選んでスイマセン」に続き、今回も「ウロコの無いネタ選んでゴ メンナサイ」です。
*その後、著名な化石魚類研究者で、下記の参考文献にある書籍の著者でもあるジョン・ロング氏より、この作品への感想を頂きました。好意的な評価を頂き、現段階では特に問題のある表現では無いようです。(2011年4月 追記)
主な参考資料
「The Rise Of Fishes」(Johon A.Long)
「Swimming in Stone」(Johon A.Long)
「Early Vertebrates」(Philippe Janvier)
「Placodermi (Handbook of paleoichthyology)」(R.Denison)
「古生代の魚類」(J.A.モイ-トマス、R.S.マイルズ)
「恐竜解剖」(クリストファー・マクガワン)
「サメ・ウォッチング」(ビクター・スプリンガー、ジョイ・ゴールド)
「世界サメ図鑑」(スティーブ・パーカー)
・The vertebrate fauna of the Cleveland memer(famennnian) of the Ohio shale( Robert K.Carr and Gary L.Jacson)
・The ancestral morphotype for the gnathostome pectoral fin revisited and the placoderm condition(Robert K. Carr, Herve Lelievre and Gary L. Jackson)
・PLACODERM BRANCHIAL AND HYPOBRANCHIAL MUSCLES AND ORIGINS IN JAWED VERTEBRATES(ZERINA JOHANSON)
・DID PLACODERM FISH HAVE TEETH?(GAVIN C. YOUNG)
・http://www.foxnews.com/story/0,2933,232600,00.html
尚、学名の読みについてですが、ラテン語読みに近い発音にすると「ドゥンクレオステウス テッレッリ」かと思いますが、ここでは一般的に認知度が高いと思われる「ダンクレオステウス」で表記しています。
Dunkleosteus terrelli
作品サイズ 32cm
縮尺 1/25
世界中で展示されているダンクレオステウスの頭部ですが、そのオリジナルはクリーブランド自然史博物館のもののようです。ですが、それぞ れの展示物により微妙な顔付きの違いがあり、どれを元にするかで雰囲気が結構変わるように思います。その違いの生じた理由は分りませんが、今回はネット上 で見つけた頭骨の側面写真(フィールド博物館の物)と各論文等に引用されている頭骨図のバランスを基本に、2008年にクリーブランド自然史博物館を訪れ た際に画像を撮ったダンクレオステウス頭骨の形状の要素を盛り込んで製作しています。どちらかといえば直線的な顔つきでしょうか。一方で、以前ディニクチ スとして論文等に引用される事が多かった頭骨図は丸顔で、そちらのイメージもなかなか魅力的ではあります。
ダンクレオステウスに関しては、顎の 可動に関する研究も発表されており、それによると口を開く際には、下顎が下がると同時に、上顎と胴体部の装甲との繋ぎ目にある関節部(?)も可動し、上顎 も上にあがるようです。その点も留意し造形しました。その研究によれば、この模型よりももっと大きく顎が上下に開くようです。口の中に関しては、現生のサ メをそのまま参考にしています。考察不足の感が否めませんが、どんな古生物でも口腔内の軟組織は毎回どうしていいやら途方に暮れる部分です。
・胴体
ダンクレオステウスの胴体を考察する際には、胴体部が発見されている数少ない近縁種であるコッコステウスを参考にしない訳にはいきません。当初はコッコス テウスのプロポーションをベースに製作、一度は塗装前まで完成させていました。当然尻尾は横に長いタイプとなります。大型の軟骨魚類という事で中~大型の サメのような縦に細長い三日月型の尾ビレも考えましたが、現生のホホジロザメのような機敏な動きが出来たようには思えず、また近縁種で良い標本が残ってい る以上、それを参考にするのが無難と考えたのです。が、その後、とある研究者さんとお話していた折に、ジンベイザメやウバザメのような、それほど機敏には 泳がないサメでも大型の種類であれば三日月型の尾ビレを持っている事を指摘され、ダンクレオステウスのような巨体の持ち主であれば三日月型の尾ビレでも良 いのでは、と考え変更しました。ただし、骨が入っていない尾ビレ下側は大型のサメに比べ大きさ控え目にしています。これは特に理由はなく、何となく、で す。また、ヒレがサメに近い構造である事を示唆する標本・研究もあり、全体的にも大型のサメに似た形状で完成させています。となると、胸ビレももっと長さ のある形でも良かったかな、とちょっと後悔していたり。また、コッコステウス型の胴体の異質な雰囲気もやはり捨て難いところです。
胴体の装甲部 と背ビレの間にあるウロコ(?)は完全に想像です。ダンクレオステウスとはちょっと系統が離れますが、板皮類の中には全身がしっかりとしたウロコで覆われ た状態で発見されている種類もあり、それならサメ型の復元を採用しつつも、少しはウロコの部分も残っていたりしないかな~という事で。造形的にも、ちょっ とアクセントが欲しかったですし。ちなみにオスとして造形しています。
・色
全くの想像です。結局サメ型の胴体としての造形になったので、胴体はベタにサメっぽい色です。背ビレ、尾ビレの先には少しアクセントを入れています。と、全体としては胴体は無難な色になったので、頭部と胴体の装甲部分は派手目に。
胴体が難しいのは予想通りでしたが、頭部についても魚の基本的な知識の無いこともあって、意外に苦戦しました。正直に言えば、顎関節周りの構造や筋肉がど うなっているか、ほとんど理解していません、、、。また、これまであまり魚類の造形の経験が多くないという事で、「魚らしさ」の表現のツボが掴み切れてい ないもどかしさも。あとは、まぁ何といっても、前回の絶滅哺乳類大会の「毛が無いネタばかり選んでスイマセン」に続き、今回も「ウロコの無いネタ選んでゴ メンナサイ」です。
*その後、著名な化石魚類研究者で、下記の参考文献にある書籍の著者でもあるジョン・ロング氏より、この作品への感想を頂きました。好意的な評価を頂き、現段階では特に問題のある表現では無いようです。(2011年4月 追記)
主な参考資料
「The Rise Of Fishes」(Johon A.Long)
「Swimming in Stone」(Johon A.Long)
「Early Vertebrates」(Philippe Janvier)
「Placodermi (Handbook of paleoichthyology)」(R.Denison)
「古生代の魚類」(J.A.モイ-トマス、R.S.マイルズ)
「恐竜解剖」(クリストファー・マクガワン)
「サメ・ウォッチング」(ビクター・スプリンガー、ジョイ・ゴールド)
「世界サメ図鑑」(スティーブ・パーカー)
・The vertebrate fauna of the Cleveland memer(famennnian) of the Ohio shale( Robert K.Carr and Gary L.Jacson)
・The ancestral morphotype for the gnathostome pectoral fin revisited and the placoderm condition(Robert K. Carr, Herve Lelievre and Gary L. Jackson)
・PLACODERM BRANCHIAL AND HYPOBRANCHIAL MUSCLES AND ORIGINS IN JAWED VERTEBRATES(ZERINA JOHANSON)
・DID PLACODERM FISH HAVE TEETH?(GAVIN C. YOUNG)
・http://www.foxnews.com/story/0,2933,232600,00.html
尚、学名の読みについてですが、ラテン語読みに近い発音にすると「ドゥンクレオステウス テッレッリ」かと思いますが、ここでは一般的に認知度が高いと思われる「ダンクレオステウス」で表記しています。
(Hirokazu Tokugawa 恐竜・古生物立体造形ギャラリー)